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メンターあるいは父元型について

臨床活動を根底で支える「メンター(精神的指導者)」と呼ばれる精神的支柱となるイメージがあります。それはユング心理学では父元型と近似の概念と思われます。個人的には大学・大学院当時のそれぞれの指導教官、最初の職場である精神病院の上司、教育分析の師匠、そして父の五人が該当します。既に鬼籍に入った人も多く、直接の関係が希薄になった人も多くなりました。私自身が生きていく上で距離を取る必要を覚えて、そうなりました。中には当初、かかわっていた時のイメージから大きく外れていった人もいます。

臨床道を極める上で、内なる対話を続ける相手として、これらメンターの投影を受ける役割として彼らは機能しており、現実の(あるいは生きていた当時の)その人たちのイメージとは異なり、私の内的世界で彼らは独自に変容を遂げます。現実には疎遠となった人が夢の中で、背中に受けた大きな傷をそれこそ丁寧になめながら私を癒やし、瀕死の私を蘇生してくれました。あるいは最後は二度童子(老人性痴呆)となり、私に救いを求める目をしていた情けない姿を露呈した父が、私が生涯で最大の危機を迎えたときに夢に現れ、モーゼのように雄々しく山頂に私を導き、指針を提示する姿として、私の魂に直接、呼びかけてきました。

心理療法の奥義として、こうしたヌミノース=聖なる次元の体験が私を臨床家として機能するように導いており、私は静かにそれと向き合うことを日常としています。日常の臨床場面でも、日々、こうした現象と向き合い続けていますが、それらはその内実を正確に伝えることが困難なほどに魅惑的であり、臨床の醍醐味です。私はその本質を次の世代に口伝で伝える天命を背負っていると自負しており、それに挺身したいと思っています。

副理事長 江口 昇勇

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